1999年にヤングユーから出版された短編集の表題作です。タイトルだけで岩館真理子さんらしさを感じてワクワクします。このお話は、ちょっと謎めいた女の子と、とってもお人好しな青年が出会ってからの、たった1日の出来事を描いたものです。 This work is a …
革命のバリケードからマリユスを救い出すという、ジャン・バルジャンの英雄的行為は、もちろん誰にも知られずに行われたのでした。目を覚ましたマリユスにとっても、当然それは謎でした。そして、それはぜひとも解かなければならない謎なのでした。 What Jea…
マリユスは、物語後半の展開において、要のような存在になります。コゼットとの愛で、ジャン・バルジャンの心をかき乱し、ゴルボー屋敷で行われるある犯罪の阻止を通じてテナルディエと関わり、その娘のエポニーヌに恋心を抱かせ、自分が革命運動に巻き込ま…
タイトルからは陰惨なイメージしか浮かばないこのお話ですが、その大きなプロットの一つは、実はラブストーリーです。 Although I feel only something gloomy with the title of this book, but in fact one of the main plots of this story is a love sto…
悪の闇が深いほど、善は輝くものです。この物語は、慈悲深いミリエル司教、改心したジャン・バルジャンと、善なるものの在り方を痛快なまでに描き出しています。しかし、このお話をさらに面白くしているのは、悪の存在です。ユゴーがこの本で告発している本…
司教に渡された銀の燭台と食器を背嚢に入れたまま、ジャン・バルジャンは郊外の道を彷徨っていました。あまりにも大きな司教の慈悲を受け止めきれず、気持ちを整理できずにいたのです。やがて路傍に座り込み、とりとめもなく物思いにふけっていた彼は、全く…
もう何回目になるかわかりませんが、読み直しています。世界中で読まれていて、ミュージカルにも映画にもなっていて、知らぬ人などいないはずのこの本ですが、自分の身近にはなぜか読んだ人がいません。理由はいくつかあるのでしょうが、第一にその長さだと…
本好きと言う割に、日本の文学にはあまり親しまずにきました。夏目漱石や太宰治、三島由紀夫といった作家の代表作は読んでいても、特にハマった作品があるわけではありませんでした。 I often say that I like to read books, but I haven’t read Japanese l…
ホラーの要素も入ったサスペンスです。 This is a suspense with a touch of the horror story. キララとは、一体何者なのか。一見、活発なこのキララという女の子は、その実在すら疑わしい人物です。しかし、主人公の十秋には、小学校の同級生に、キララが…
子どもの頃から読書にこもりがちでした。友達が遊びの誘いに来ても、読みたい本があれば姑息に居留守をしていました。好き嫌いはあります。自分でも基準はわからないのですが、ベストセラーであっても、冒頭の数ページで入り込めなければ、素直に読まないこ…
題名のキングラットとは、キングが金儲けのために行った一つの試みに関係しています。彼は、ネズミを飼育して、その肉を売りさばこうとしていたのでした。それは、一匹の大きく、凶暴なネズミを捕らえたことをきっかけに始まりました。しかし、床下に設けら…
収容所の中で思い通りに振る舞ってきたキング。人心を操るのも上手く、彼がくれる卵1個、たばこ1本のために、彼に取り入る人間も多いのでした。不自由な収容所の中で、できる限りの自由を手に入れようとするキングの姿が痛快に思えて、この物語の主役は疑…
日本兵による、捕虜虐待のシーンなど、全く描かれていません。そもそも日本兵自体がほぼ登場しません。日本軍の戦争捕虜収容所を舞台にしたこのお話が告発しているのは、戦争そのものの非人間性だと感じています。以前、紹介した本「キングラット」をようや…
タイトルの質感に、もう岩館真理子さんらしさを感じてワクワクします。1994年、集英社発行の「白いサテンのリボン」は4つのお話からなる短編集です。 The texture of the title is something typical of Iwadate Mariko and it makes me thrilled. “Shi…
英語のスキルアップのために、原著を読むように心がけています。先日、自分の英語の先生でもあるカナダ人の友人が、一冊の本を貸してくれました。ジェームズ・クラベルというイギリスの作家の「キング・ラット」という本です。 I make a point of reading or…
ミステリーなのに、なぜか明るく、透明感あふれるお話です。ずっと集英社から作品を出版していた岩館真理子さんですが、この本にある作品は角川書店の雑誌、「ヤング・ロゼ」に掲載されていたものです。 Although it’s a mystery story, it’s also full of c…
007ファンにはたまらない本です。昨年10月に出版された「Shaken: Drinking with James Bond and Ian Fleming」は,007シリーズの作品に登場する全てのお酒を網羅した本です。 This book is somewhat fabulous for fans of 007. “Shaken: Drinking wi…
レジスタンスと恋と複葉機,一種のスパイ小説と言えるこの本には,ワクワクする要素がてんこ盛りです。第2次大戦中のデンマークを舞台とするこのお話は,イギリスの作家,ケン・フォレットが書いたもので,2002年に出版されました。 There are many ele…
ナチス占領下のオランダにおける,ユダヤ人のレジスタンス活動を描いた映画です。主人公のユダヤ人女性ラヘルを演じたのは,カリス・ファン・ハウテンというオランダの女優です。 This is a movie about Jewish resistance movements in Netherlands occupie…
感想をはばかるべき本に出会うことがあります。先日読んだ,貫井徳郎さんのデビュー作「慟哭」がまさにそうでした。 Sometimes I find some books that we shouldn’t talk about the impression. Nukui Tokuro’s first work “Dokoku”, which I read the othe…
本屋になりたい。本好きなら,一度は心によぎったことがあると思います。この本を読んで久しぶりにそんな気持ちになりました。 “I want to be a bookseller.” I guess anyone who loves books must have thought like that at least once. I felt like that …
いわゆるサラリーマン三部作の最終巻です。主人公は,10歳にしてM.I.T.の経営課程を修了したというマーケティングの天才小学生,五郎です。 This is the last volume of the salaryman trilogy. The main character is an elementary school boy called Go…
新たな名探偵の登場です。日系アメリカ人作家のジョー・イデが著したミステリー「IQ」を読みました。IQというのは,主人公であるアイゼイア・クインターベイのニックネームです。 Here comes a new detective hero. I read a mystery titled “IQ” which …
「週刊マーガレット」それから「ヤングユー」に作品を連載していた岩館真理子さんですが,この「子供はなんでも知っている」は同じ集英社の「ぶ~け」で発表されたものです。コミックスの第一巻が出されたのは1990年で,「うちのママが言うことには」や「冷…
北天の馬たち (角川文庫) 作者: 貫井徳郎 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2016/09/22 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 何かしらポップでさわやかな,そして切ない気持ちになるミステリーです。タイトルから受けた,冷たくて,シリアスな印象…
先を知りたくて,ページをめくる手が止まらなくなる。そんな本に出会いました。薬丸岳さんの「天使のナイフ」です。2005年に出版されたこの本は,江戸川乱歩賞の受賞作です。 I read a book that I can call it a page-turner. The book is “Angel’s Kni…
アーティフィシャル・フラワーズ 作者: 高岡ヨシ 発売日: 2018/11/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 小さいけれどあたたかい灯が心の中にともるような,そんな気持ちになりました。 以前紹介した,高岡ヨシさんの「歩けばいい」は,冴えな…
子どもの頃家にあった,古びた子供向けの世界文学全集を開くとき,日常とは違う世界に浸っていました。ストウ夫人の「アンクル・トムの小屋」に泣き,コナン・ドイルの「赤毛連盟」の謎解きにワクワクし,エドガー・アラン・ポーの「黒猫」に暗い興奮を感じ…
しりあがり寿さんによるサラリーマン三部作の一つに,髭を生やしたOLを主役にした作品があります。「ヒゲのOL 薮内笹子」です。女にしてふさふさとした口髭をたくわえているというだけで,もう心がざわつきますが,その理由でさらにワクワクします。笹子…
読み終わって,しばらく涙が止まりませんでした。一般的なモノサシからみて,明らかに負け組の2人,ハナダとシンヤが東京スカイツリーを目指して,ただひたすら歩くというお話です。 I couldn’t stop crying for a while when I finished reading this book…
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